釣船茶屋ざうお

ざうお天神店

しょうたのデッドオアアライヴ釣行記 ~活魚の処理を考える~

※今回魚の血等が多く出てきますので、苦手な方はご注意ください

 

せっかく釣った魚。より美味しく、少しでも良い状態で食べてあげたいですよね。

オフショア、陸っぱり問わず釣れた魚を持って帰って食べるという方は多いと思います。
今回はせっかく釣った魚をより美味しく食べる為の処理について自分なりのやり方を紹介します。

 

まず用意するもの

① フィッシュナイフ
② 神経抜き用の針金
③ 〆用のクイ
④ 保冷能力の高いクーラーボックス

 

① 【フィッシュナイフ】
必須です。〆から血抜きまでこれがないと何もできません。
ただ今のご時世銃刀法関連にはシビア。
携帯には刃渡り何センチ以内とかあるので自己責任で。

 

② 【神経抜き用の針金】
これも自分的には必須。理由は後述しますが釣具屋にある形状記憶のものが使いやすい。

 

③ 【〆用のクイ】
これはどっちでも。ナイフでも代用できます。

 

④【保冷能力の高いクーラーボックス】
必須です。処理を終えた魚の鮮度を保つのに保冷能力の高いクーラーボックスは外せません。
理想は釣り用のものを。
予算の問題で用意できない方は通常のクーラーボックスの底面に発砲スチロールを敷き詰めるだけで氷の持ちは格段に変わります。

陸っぱりの方は上記の物にプラスでストリンガー又は血抜き用のバッカンそして氷が必要になります。

 

 


ここで簡単な魚の構造をイラストで。

コチやヒラメなどの特殊系を除いて大体同じです。

 

活魚の処理は

① 〆によって脳を破壊する
② エラを切って血抜きし、
③ 神経を抜いて死後硬直を遅らせ
④ 氷海水で体温をすばやく下げ
⑤ 保冷によってそれを維持する

という5つの工程を踏みます。

 

ナゼそういう処理をしないといけないのか、そもそも魚の鮮度とはどういう考え方で臨むものなのかは、「魚の鮮度を科学する」で検索すると非常にわかりやすいものが出てきます。是非ご一読ください。

この後の工程の説明の中で写真だとちょっと見た目が、と思う所はイラストを挟みながら説明していきます。

 

あとは実釣しながら。

ブイーン

 

 

工程①:脳〆

今釣れた魚。〆クイやナイフを使い脳を破壊します。
暴れさせないよう手早くが大事。

 

 

 

工程②:血抜き

エラ部分を広げてみるとカマとつながっている薄い膜があるのでそれを切る。

あらかじめ常温の海水を用意しておき

その中に漬ける。脳〆をした後も自律神経である心臓はしばらく動いています。

そのポンプ作用で血抜きを行います。
尾側も切ってしまうと血圧がさがるのでエラ側だけで。

血抜き終了の目安は最初真っ赤だったエラの色が鮮やかなオレンジくらいに変わり、海水から引き上げた時に垂れる水が透明になるくらいです。

検証の為に処理をきちんとした物と何も処理せずほったらかし、いわゆる野締めにした物を食べ比べた事がありますが、野締めのものは血の味や雑味が多く時間がたつにつれ、旨み・食感ともに両者にはっきりと差がつき始めます。

特に青物ではそれが顕著だと感じました。

 

 

 

工程③:神経抜き

血抜きを終えた魚の神経を抜きます。頭から入れるやり方もありますが、ここでは簡単な尾側からのやり方で。

背ビレと腹ビレの生え際くらいからナイフを入れ骨まで断ちます。

 

 

 

真ん中が脊椎。その上の小さい穴が神経、下が動脈です。

 

 

 

神経の穴に針金を通し、神経をつぶします。

これをする事で死後硬直までの時間を遅らせ熟成時の2度目の旨みのピークを魚本来の味に引き上げる事が目的です。

 

 



魚の鮮度と旨みの関係はこういう曲線を描くと思っています。

その魚の個体差と処理のやり方で曲線は多少変動しますが、適切な〆、血抜き、神経抜き、保冷が行われ、その後の内臓の処理と完全な血液の排除が行われた魚は雑菌の繁殖が抑えられ、長時間の熟成に耐えられるようになります。

一般的に我々が認識する熟成とは2つ目の曲線の事を指し、上記の処理を施す事でその魚本来の美味しさを引き出す事が目的なので、それ以上の味にはならないという事には留意しないといけません。

逆に今までやっていなかったという方はまだ本来の美味しさを味わえていないはず。
なので、やってみる価値は大いにあると思います。

旨み成分のイノシン酸などを数値で出して客観的なデータを出せればより説得力のあるものになったと思うのですが、計測する器具が高額なものしか見つけられず、断念せざるを得ませんでした。

で、続きです。

 

 

 

工程④:予冷

神経抜きを終えた個体の体温を氷海水で下げます。

ちょっと船上のスペースの問題でできなくて画像がないですが、夏場とかは特にやった方が良いと思います。
自分のクーラーを氷海水用にして船のクーラーで保冷させてもらう感じが自然かなと思います。

 

 

 

工程⑤:保冷

直接氷と魚体が触れないようビニール袋や濡れ新聞でくるんでクーラーボックスで保管します。

 

 

 

ここまでが自分なりに勉強し、比較検証を重ねて今現在一番ベストかなと思うやり方です。
船上ではここまで。持ち帰ってからエラ、内臓を取り、血合いまできれいに掃除するところまでやれば熟成を前提にした処理が完成します。

 

キチンと処理を終えた魚達は

どれも美味しそうじゃないですかー!

 

 

まとめ

食べる目的で釣りをするならば、釣ってからその先のより美味しく食べてあげる所まで考え、実践し、知識として身につける事は決して無駄ではないはずです。

こんなに味が変わるんか!という発見と感動がそこにはあり、それらを仲間や家族と共有する事も『命をいただく』という事に対するひとつの誠意じゃないでしょうか?

次は3キロくらいの養殖の活かしのカンパチでより詳しく熟成について考えてみたいと思います。
オタノシミニー!

 

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