釣船茶屋ざうお

香川 妙美

中にいたら気づけない部分をカタチに。ざうお目黒店のこだわり~上野建築研究所×ざうお社長・副社長対談【第3回】~

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▲数十種類の銘柄を陳列している酒棚

 

お店づくりでパートナーを組む、上野建築研究所 代表 上野幹恭さんをお招きし、全4回にわたってお送りする、ざうお社長・副社長との対談企画。 (第1回第2回はこちらから)

第3回は、上野さんが手がけた目黒店のだわりに焦点を当てます。
これを読んで目黒店に行けば、ひと味違う視点でざうおをお楽しみいただけるかも!?

 

和久: 目黒店は、上野さんならではの視点がたくさん詰まっていますよね。
たとえば、僕のお気に入りのワインセラーも上野さんのアイディア。ざうおでは色々な日本酒やワインを扱っているものの、ボトルオーダーはいまひとつ。お酒はあまり動かないもの、というイメージが何となくあったんですよ。
でも、上野さんが「これだけの取り扱いがあるんだから、お酒屋さんみたいに陳列したら」と提案してくれて、そのための棚もつくってくれて、「調湿はできないけれど温度管理はできるから」とエアコンも付けてくれて。
お酒の説明書きも上野さんによるものです。 以来、ボトルオーダーはコンスタンスに出るようになりました。ボトルキープしてくださるお客様もいらっしゃるんですよ。

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▲温度管理されているワインセラー

 

拓也: 座席の配置もそうですよね。実は目黒店は完全な個室が無い。パーテーションで仕切られた半個室にしました。
それはどの席でもお客様同士の賑やかな雰囲気が共有できて、お店に一体感が生まれるようにと考えて。
全体をとおして中にいると気づかない、ざうおの良さを打ち出していただいていますよね。
釣り竿のディスプレイにもこだわりました。

 

上野さん: そうですね。釣り竿は、魚釣りというざうおならではの楽しみ方を形成する重要なツールなので、それを大切にしていることを表現できればと、1つ1つが商品のように壁に整然と並べられるようにしました。
目黒店の釣り竿は、他のお店よりも短くつくられたんでしたよね。
これは、通路幅のゆとりをどうつくるかが発端でしたが、それにともなって、いけすの水深も浅くしたり、いろいろ検証をして。
余談ですが、そのとき釣り竿の長さがどうか、釣るときのフォームがこうだとか、大の大人が集まって真剣に話し合う姿が、傍から見ているとおもしろくって。
でも、そう言ったささいな部分にも熱を込められるところから、ざうおのすごさが生まれるんだって感じていました。

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▲  釣り竿のために作られたラック

 

和久: とはいえ、上野さんさ、はじめのころ「釣りはいらない」って言ってなかった(笑)。

 

上野さん: ああ、そうだった(笑)。福岡の店のイメージから、釣りはお子さんが楽しむものという印象が強かったんですよ。
ざうおは、料理のクオリティがとても高いこともあり、目黒店はそこをしっかり打ち出すつもりで、いけすは外そうと考えていたのですが……

 

拓也: 関東では大人のお客様もお子様も、みなさん楽しんで釣るんですよ。

 

上野さん: そうなんですよ。地域が変わるとお客さんの楽しみ方ってこんなに変わるんだ、と関東エリアの店を視察して思いましたね。
釣りもざうおの原点だと分かったので、釣りの楽しさと食のクオリティの両立をコンセプトにお店づくりを行いました。
『釣り』は先ほどお話ししたとおりなんですが、『食』についてはキッチンの舞台化とでも言いますか、ざうおは釣った魚をその場でさばいて調理するので、そのライブ感をお客さんに感じてもらえるようにガラス張りにしました。

 

拓也: キッチンのガラス張りは当初、戸惑いがありましたねえ。
今までなかった部分だったんで、「えっ、この環境でさばくの」みたいな空気も少し流れたんですが、結果としてお客様に喜んでいただいていますし、スタッフにも良い緊張とハリが生まれました。 ただ、なかには変な緊張の仕方をするスタッフもいてですねえ(笑)。集中し出すと、舌が出るんですよ。あと、顔がこわばり始める人間もいたり。
そこで、オーダー伝票に『笑顔』と印字できるようにし、ホール係が必要に応じ押すというオペレーションが生まれました(笑)。
魚をさばいているところを楽しそうにお子様が眺めている姿を良く見かけます。
こんなふうに上野さんは、僕らが気づけなかったざうおの良さを見つけてもらったり、踏み出せなかった一歩を後押ししてもらいましたよね。
ざうお全体で見ても目黒店のオープンを機に、一皮むけた感が出てきたと思っています。

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▲  調理風景が見えるオープンキッチン

 

ざうおが持っていた固定観念を外し、大切にしている部分を行きわたらせた目黒店は、ざうおに新しい風を入れることになりました。

次回、最終回は上野さんが感じる『ざうおらしさ』に焦点を当てます。
新たなプロジェクトも始動。どんな展開になるのでしょうか。どうぞお楽しみに。

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