釣船茶屋ざうお

香川 妙美

お店づくりは『ざうおの個性』とのぶつかり合いの連続 ~上野建築研究所×ざうお社長・副社長対談【第2回】~

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お店づくりでパートナーを組む、上野建築研究所 代表 上野幹恭さんをお招きし、全4回にわたってお送りする、ざうお社長・副社長との対談企画。
第2回は、上野さんが出会った、ざうおの中の人の話。その強烈な個性とのエピソードは大変興味深いものでした。(第1回はこちらから)

 

上野さん: 目黒店の設計にあたっては、執行役員飲食部本部長の小野さんにずいぶんお世話になりました。
魚の環境をどのように維持しているのか、いけすの構造がどうなっているのか、シンボルである船の造り方など、親身にいろいろ教えてくださって。
遅い時間に連絡したときも、「電話じゃ分かりづらいから、これから会いましょうや」って言われ、深夜なのにひざを突き合わせてレクチャーを受けたりもしました。
小野さんとのやり取りで今でも鮮明なのが、「世代交代して初めてのざうおの出店だから、失敗は絶対に許されんからな。あんたも覚悟してや」って言われたこと。もう任侠の世界(笑)。
でも、経営者への厚い信頼が込もっていますよね。ざうおさんって、魂の通い合う会社だと改めて感じました。

▲ 執行役員・飲食部本部長の小野さん

▲ 執行役員・飲食部本部長の小野さん

 

和久: で、熱心につくっていただいたのに、まもなくオープンって段階でハプニングが起こったんですよね(笑)。

 

上野さん: 先代(現会長)が視察に来られたのですが、シンボルである船を目にした途端、「イメージと違う」ってすごい勢いでダメ出しされて……

 

拓也: あの剣幕はすごかったよね(笑)。会長は、自分がずっと造ってきているものだから、フォルムが良くない、俺ならこんなふうにするとか、言いたいことを好きなだけまくし立てて嵐のように去っていったもんね。
「俺なら、三日もあれば造れる」って豪語もしてたし(笑)。 ただ、上野さんには、その日のうちにすべて修整していただいて。

 

上野さん: 会長のカリスマ性ってすごいんですよ。それを目の前にしてしまったからには、もうやるしかない。とにかく必死でした。
でも、この話には続きがあるんです。目黒店の2年後に、今度は渋谷店の話をいただきまして。
渋谷店は会長に船の製作をお願いして一緒に造らせていただきました。 何がすごかったって、一番は造るスピードの早さ。次に休憩を取らないこと(笑)。
朝5時から20時までぶっ通しで造り続け、1日で骨格がほぼできあがりました。 で、その日の作業はここで終了したんですけど、「これからお前の造った船を見ながら酒でも飲もうか」と、目黒店に連れてこられ(笑)。
とにかくいろんな意味でプレッシャーがすごかった(笑)。そして、翌日には船が完成していました。
あとから聞いたのですが、他人に船の造り方を見せたのは初めてだったそうです。本当にお見事でした。

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拓也: その話には裏があるんですよ。目黒店で上野さんに「三日で造れる」って言ってしまったでしょ。
実は、事前に福岡で組み立ててシミュレーションしてるんです。で、「三日って言ったけれど、それを二日で造ってやろう」と。会長は、人を驚かせることが好きなんですよ。

 

上野さん: そうだったんですね(笑)。それにしても技術力の高さには息を呑みましたよ。
僕たちは仕事にするために覚えるんだけど、会長をはじめみなさんは、自分たちで造れるものは造る、そのために覚えるというスタンス。
そもそも技術習得の考え方が僕らとは違う。ああいうのを職人魂っていうんでしょうね。

 

和久: 会長は、これまでに30艘以上造っていますが、自分以外の誰かが造るのは初めてですからね。
文句を言いつつも上野さんが船を造ってくれたことが純粋に嬉しかったんだと思います。まあ、半分は自分の技術を見せつけたかったんだと思いますけど(笑)。

 

拓也: 渋谷店の船は、僕らが見てもかっこいいなあって思います。

 

上野さん: 渋谷店は店舗サイズの制約もあり、船首の部分しか設置できなかったんですが、会長も出来栄えに満足されたようで、一艘まるまる置けなくても、これからはドミナント方式で出店していくことも必要と考える契機になったようでした。

▲  船を制作中の会長

▲ 船を制作中の会長

 

目黒店完成の舞台裏と船の製作を巡るドラマは、想定を超えるエピソードが満載で、聴きごたえ抜群でした。
第3回は、上野さんのエッセンスが散りばめられた目黒店のこだわりをご紹介します。
どうぞお楽しみに。

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